2013/10/04 - 1:18午前 -- admin

大動脈ステントグラフト留置における術前評価と術中画像誘導をする統合支援システムの開発

 

1. 背景・目的

ステントグラフトとは大動脈瘤径の拡張を防ぐためにグラフトを挿入しステント骨格で抑えるデバイスである.合併症を回避するための血流の温存には分岐部に対するステントグラフトの位置と回転を正確にコントロールする必要がある.ステントグラフトの位置についてはシース挿入時の前後方向の移動量により決まり,また回転量については挿入前のシースへのステントグラフトの装填角度に依存する.本研究ではステントグラフトの正確な留置を支援する統合システムの開発を目的とする.

 

2. 方法

(a)体外式評価シミュレータ: ステントグラフト内部にセンサを4カ所(先端1点, グラフトの周方向に3点)に取り付け,6DoFの情報をトラッキングする.これらが作る三角形の姿勢からステントグラフトの回転角度を算出し,評価する.

(b)画像支援システム:  C-arm CTの持つ歪曲収差の補正を行い, C-arm CTの画像上に血管モデルを重畳表示させ,その際のズレを比較する.

 

3. 結果

(a)体外式評価シミュレータ: 弓部に動脈瘤を持つ患者のモデルに対し,計測で得られたセンサの軌跡をFig.2に示す.センサの作る三角形の開き始めの点を展開開始,三角形の形状,位置が安定した点を展開終了であると確認出来た.この展開開始と,展開終了の点のステントグラフトの角度変化を算出したところ,X軸周り:9.0°,Y軸周り:8.1°,Z軸周り:1.2°であった.術者が術中にコントロール出来る回転は,シースに充填する際に調節出来るY軸周りの回転である.これより,本モデルの形状を持つ患者の場合,約8度回転をさせてシースに充填するのがよいと言える.

 

(b)画像支援システム:  重畳表示した際の結果をFig.3に示す.面積誤差を比較したところ,補正前で7,382pixel,補正後で2,636pixelとなり,補正により面積誤差は64.3%減少した.これにより,直感的にモデルの重畳が行え,正確な画像支援を行うことが出来るようになった.重畳位置を本システムの臨床応用では,術中に煩雑な画像撮影を必要とせず,術前の計画に基づいた画像を術中の情報に付加することで,術者のイメージ増強に役立てることができた.

 

4. 結語

 本システムの統合的利用により,術前のシースへのステントグラフトの装填角度の決定から,ステントグラフトの展開支援を行うことができた.これによりステントグラフト内挿術において医療の質の確保,技術の標準化に繋がる可能性を見出した.

 

 

 

参考文献

 

 

 

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