1. 背景・目的
日本胸部外科学会の報告では,弁膜症手術数は 1997 年から 2009 年の間に約 2 倍に増加しており,弁膜症外科治療>の重要性は今後も増していくと考えられる.僧帽弁置換術においては,人工弁置換による左心室機能の低下,弁輪サイ>ズの制限や長期間の抗凝固療法といった課題が残されている.このような状況を改善するために開発したのが,ヒトの
僧帽弁構造と類似した,ステントレス僧帽弁(NORMO 弁)である.ステントレス僧帽弁は弁―乳頭筋の連続性が保持され,弁尖がステントに支持されないという世界に類をみない独創的な人工弁である.
2000 年に僧帽弁形成術を工学的に正確に評価することを主な目的として,空気圧駆動装置を内蔵した拍動型循環シミ
ュレータを開発し,ステントレス僧帽弁が左心室の生理的な収縮運動に伴う理想の形に近い挙動を示すことを確認し>た.この拍動型循環シミュレータを用いて,NORMO弁の性能を定量的に評価し,医療デバイスとしての有効性を検証した.
2. 方法
Fig.2に示すような循環器シミュレータを用い,NORMO弁の評価を行った.拍動数は 70BPM,平均大動脈流量 5.00L/min,平均大動脈圧 90.0mmHg とした.ほぼ同一の弁口面積を有する機械式弁とステントレス僧帽弁の平均通過流量を比>較した.
3. 結果
機械式弁では 3.55±0.13L/min,ステントレス僧帽弁では 4.70±0.13L/min(P<0.01)となった.ステントレス僧帽弁は>機械弁と比較して,平均通過流量が約 30%高いことからその有効性を確認した.
参考文献
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