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研究テーマSERVICE&PRODUCTS

低価格補助人工心臓の開発

心臓の病気により心機能が低下した患者さんに,血液の循環を維持するため,補助人工心臓を装着する場合があります.補助人工心臓の価格は数百万〜1千万円し,急性症状に対する短期使用は行いづらいのが現状です.梅津研では,真空成型技術を応用することで補助人工心臓の大量生産方法を確立し,価格を約30万円まで下げることに成功しました.ただ低価格なだけではなく,ポンプ内にスムーズな旋回流が生じるよう設計されており,血栓ができにくい構造になっています.

自己心膜僧帽弁の開発

僧帽弁とは,心臓内の左心房と左心室の間にある弁です.リウマチや弁膜症などの病気により僧帽弁の機能が損なわれると,左心室から左心房に血液が逆流し,生命維持に必要な血流量が得られなくなります.このような場合には,手術を行い,僧帽弁をまるごと人工の弁に取り換えることがあります.人工弁は,機能こそ僧帽弁と同じですが,形態は全く異なるため,弁置換によっていわば不自然な心臓が形成されてしまいます.梅津研究室では,患者さん自身の心膜を用いて機能と形態両方を再現する僧帽弁を,医師との共同研究で開発しました.ヒト心膜の代わりにウシ心膜で製作した弁と,僧帽弁評価装置を用いて,開発した僧帽弁の機能や挙動を調べています.この弁はNORMO弁と名付けられ,臨床への応用も開始されています.

血管埋め込み型医療機器「ステント」の加速耐久試験

@ステントとは:動脈硬化により,血管が狭くなって血液が流れにくくなっている部分に,血管の内側から拡張させて血流を維持する網目状の金属製の医療機器である.Aステントの問題点:心臓の機能を維持している冠動脈は心臓の拍動によって,太腿の浅大腿動脈は歩行によって,血管の屈曲,伸縮,ねじり等の様々な変形が生じる,それらの変形により生じる負荷が原因で血管内に留置されたステントに破損が生じる問題がある.Bステントの耐久試験:心臓の拍動や歩行によって生じる血管の屈曲,伸縮,ねじり等の様々な変形を模擬できる装置(Fig.1 ,Fig.2)を開発し,繰り返し負荷を加速的に作用させる耐久試験を行い性能を評価する.Cステントの臨床例:日本では,冠動脈ステントが年間30万本,冠動脈以外に使われる末梢ステントが年間5万本程使用され,その開発中または市販後の耐久性を明確化している。

Tissue Engineering弁、靭帯の開発

異種生体組織のヒトへの移植を可能とする,生体組織の脱細胞技術が注目されています.本研究班では異種生体組織をヒトに移植する際の最大の障壁であり,拒絶反応の原因となる細胞成分を完全に除去できる組織無細胞化技術を開発し,無細胞化装置の製作と改良を行ってきました.現在無細胞化技術を用いて,ウシのアキレス腱や心膜,ブタの大動脈弁をヒトのひざ前十字靭帯再建や弁膜症における移植材料として臨床応用することを目指しています.

In-vitro血液適合性評価方法の確立

液適合性の主な評価方法である動物実験には、倫理面やコスト面などで多くの問題があります。本研究班では,それらの問題を解決した、生体模擬環境下における生体外(In vitro)での血液適合性評価システムの確立を目的とし、研究をおこなっています。写真に示しているのは本研究班で開発したIn vitro血液適合性評価装置です。これらの装置を用いて、医療機器の血液適合性の主な指標である抗血栓性や免疫反応性の評価をおこなっています。

未破裂脳動脈瘤に対する血流診断を用いた予測医療の確立

脳動脈瘤とは,脳血管内に出来たコブ状の病変のことで,破裂率は0.05%/年と低いが,一度破裂すると約半数がくも膜下出血を引き起こし死亡する恐ろしい病気です.現段階では,どの瘤が破裂するか分かっていないため,患者は手術リスクと経過観察のリスクの両者を天秤にかけて判断しなくてはいけません.そこで我々は,脳動脈瘤内の血流を評価・診断することで,破裂予測を行おうとする研究を行っています.血流診断結果を医師にフィードバックすることで,未破裂瘤に対する治療方針(手術or経過観察)を診断することのできる従来にはない予測医療の確立を目指しています.

赤血球破壊の可視化

機械式人工弁付近では,複雑な流れによって赤血球破壊が生じており,これが血栓症などの重篤な病気に繋がる可能性がある.しかし赤血球破壊が,いつ,どこで,どのように生じるのかは未だ明確にされていない.梅津研可視化班では,実際の流れをマイクロ流路を用いて再現する事で,工学的観点から血球細胞の破壊のメカニズムを解明し,将来的には臨床にフィードバックしていく事を目的としている.

拍動下冠動脈バイパス手術 吻合手技訓練装置(BEAT・YOUCAN)の開発と手技評価

心筋梗塞や狭心症の外科的治療法の一つとして冠動脈バイパス手術がある。この手術は高度な技術が求められているが、若手外科医の臨床経験の不足、WET LABの日常的訓練の困難、という教育訓練環境の現状から反復的、日常的訓練を可能とする吻合手技訓練用血管モデルによるトレーニングに期待が寄せられている。そこで、梅津研究室では拍動下冠動脈バイパス手術(OPCAB)の血管の吻合訓練を目的とした、心拍動を再現するBEATとシリコーンによって血管を模擬したYOUCANからなるシミュレータを開発した。本シミュレータを用いた、日常的トレーニング環境の実現のために形態学的・流体学的観点から定量的に訓練効果を検証することで血管吻合訓練カリキュラムの実現を目指す。

CFDによる大動脈内血流シミュレーション

生まれつき心室が1つしかない単心室症といった、重篤な先天性心疾患は、手術後の血流の善し悪しが患者の長期生存率やQOLに大きく影響します。我々は手術後の血流を数値流体解析(CFD : Computational Fluid Dynamics)によって評価し、再手術の必要性や術式改善の提案など、臨床にフィードバックを行っています。また、 CFDの計算結果をMRIで実測した血流と比較することでCFD手法の妥当性評価を行っています。

心筋シート積層化による心筋組織の作製

重症心不全患者を対象とした治療法として細胞シート工学が注目されている. 細胞シート工学のコンセプトは温度応答性培養皿を用いて細胞をシート状に回収し,それを積層化した組織を移植するというものである.この組織化が実現すれば,将来的に心臓移植・人工心臓などに代わる新たな治療法になりうる. 本研究チームでは,細胞シートの技術を用いて移植可能な厚い心臓の組織を生体外で創製することを目的としている.

スプラウティング抑制に向けた微小血管モデルの作製

重MEMSはMicro Electro Mechanical Systemsつまり微小電気機械システムの略で,様々な機能を持ったデバイスの小型化や集積化を実現できることが大きな特徴です.我々は, このMEMS技術をバイオの分野において応用することを目指しています.バイオMEMSの技術は微小血管レベル,また細胞レベルにおける生命現象の解明に役立てられることが期待されています. 現在,微小血管レベルにおける疾患のメカニズムの再現を目指し,チップ上で微小血管の製作を行っております.当研究班は東京大学生産技術研究所・松永研究室で活動しています. Link: http://www.matlab.iis.u-tokyo.ac.jp/