Fri, 2013-10-04 00:54 -- admin

1. 研究背景・目的

冠動脈ステントは薬剤溶出型ステントの登場で劇的に再狭窄率が改善されている.一方で近年ステントの断裂例が臨床で数多く報告されるようになり,その原因究明が求められている.本研究では,臨床でステント破損報告の多い右冠動脈の基枝部に注目し,心臓の収縮・拡張に伴う屈曲変形を再現する加速耐久試験装置を開発し,臨床で使用されているデザイン・材質の異なる5種類のステントについて加速耐久試験を行い比較評価した.

 

2. 研究方法・装置

2.1 ヒト右冠動脈の屈曲変形解析

 札幌整形循環器病院の協力のもと,57人の患者の血管造影像及びCT画像から心臓の収縮・拡張に伴う右冠動脈の屈曲変形を解析した.具体的には,右冠動脈の1番と呼ばれる基枝部の冠動脈の拡張期について左前側位及び頭位に傾けて撮影したCT画像について,(1) 屈曲角度が鋭角の場合には,屈曲角度が最大に見える撮影方向が右冠動脈を最も正面に近い角度から見た画像といえる,(2) 屈曲角度が鈍角の場合には,屈曲角度が最小に見える撮影方向が右冠動脈を最も正面に近い角度から見た画像といえる,ということに基づき,できるだけ正面に近い撮影角度を決め,その角度で撮影した血管造影像から心臓の収縮・拡張に伴う最大屈曲角度及び最小屈曲角度を求めた.

 

2.2 屈曲変形負荷型加速耐久試験

 最大屈曲角度に合わせた内径3mmの屈曲血管モデルを製作し,Stiffness Parameterをヒト冠動脈の値である29.81)に合わせた.ステント留置前の屈曲血管モデルの屈曲角度を屈曲角度解析データをもとにACC/AHA分類でTypeBの105°~125°となるようにボイスコイルモータのストロークを制御した(Fig.1).屈曲血管モデル内はリン酸緩衝生理食塩水で満たし,37℃の環境の下20Hzで加速耐久試験を臨床で使用されている5種類のステントについて行った.

【出典】

  1. Paul et al., Shear stress related blood damage in laminar coquette flow, Artificial organs 27(6),517-529, 2003
  2. Kameneva MV et al., Effects of turbulent stresses on mechanical hemolysis experimental and computational analysis, ASAIO Journal, 50(5),418-423, 2004