拍動下冠動脈バイパス手術 吻合手技訓練装置(BEAT・YOUCAN)の開発と手技評価
1. 諸言
手術室外における若手心臓外科医の手術スキルの養成が世界共通の課題となっており,シミュレータの活用が期待されているが,訓練効果の科学的に検証が求められている.本研究では,実際に合計60 名以上の日米の若手心臓外科医に対して3 ヶ月を1 単位とする独自開発したシミュレータによる継続的血管吻合手技訓練を実施し,形態学的、流体力学的観点から訓練効果を検証することで,シミュレータを用いた効率的血管吻合訓練カリキュラムの確立を目指す.
2. 方法
○ 吻合モデルの医工学的評価方法
<形態学的評価>
吻合済みモデルは,マイクロCT による吻合内腔形態を計測する.吻合内腔断面積,吻合部断面形状アスペクト比を算出し,形態学的観点から狭窄の有無,度合いを評価する.特に吻合部の断面形状が細長くアスペクト比が高い場合には,スムーズな血流を阻害する要因となることが明らかになっている.次に出力されたDICOM データを元に数値流体解析用の3 次元モデルを構築する.
<流体力学的評価>
数値流体解析には汎用解析ソフトANSYSFLUENTを用い,狭窄部におけるエネルギー損失を算出する.解析結果では,流れの詳細を可視化できるため,参加者は吻合狭窄による血流への影響を直感的に理解することが出来,効果的フィードバックとなることが期待される.